東京手植ブラシ
とうきょうてうえぶらし
- その肌触りを作るために必要なのは、手作業でした。
- 近代化に伴って欧米から伝わったブラシは、洋服ブラシ、靴ブラシ、ボディブラシなど、幅広い製品展開を遂げてきた。その多くが機械で作られるようになった今も、手植えを貫いているのが東京手植ブラシである。使用される毛は馬や豚などの獣毛や植物繊維で、まずは良質な毛以外を処理する整毛を行う。次に行う植毛の工程に、職人の技量が最も発揮される。毛は胴体や尻尾など部位によって性質が異なるため、柔軟性や弾力性を見極めながら毛を使用する。そして、全体のバランスを見ながら、手の感覚を頼りに適量を掴んで穴に植えていくことで、毛が抜けづらい耐久性など、機械製との圧倒的な違いが生まれる。穴の密集度は何度も試作して導き出されたものだ。馬毛で作られた洋服ブラシは、カシミヤや着物といったデリケートな生地の光沢を保ち、ダメージを与えない。肌に触れるブラシには毛が細くてソフトな山羊の毛を用い、毛にやさしく包み込まれるような特別な感触をもたらす。職人たちは変わりゆくニーズに即したブラシを作ることを本懐とし、日々、究極の毛を求めて研究を重ねている。
主な製造地 | 台東区、墨田区、荒川区ほか |
---|---|
指定年月日 | 平成14年1月25日 |
伝統的に使用されてきた原材料 | 毛材:刈萱(かるかや)、パーム、パキン、シダ、ツグ、馬毛、豚毛、山羊毛 木地材:桂、ホウ、桜、ブナ、竹 |
伝統的な技術・技法
- 木地加工:
木地を切断して、鉋で削る。 - 型付け:
木地に型板を置き、植毛部分に墨で目印を付ける。 - 穴あけ:
型付けした木地に穴をあける。 - 毛切り:
毛材を一定の長さに切断する。 - 振り混ぜ:
毛の先(軟)と根(硬)が同じになるよう、手で混ぜる。 - 毛ごしらえ:
短毛、クセ毛等を除去する。 - 植付け:
一定量の毛材を正確に摘まみ取り、木材の中心に引き線を通し、二つ折りにして、穴に植え込む。 - 蓋付け:
引き線を隠し、使いやすくするため、薄い木の板を取り付ける。 - 木地仕上げ加工:
①本体と蓋の大きさを揃えて手触りを良くする。
②横の部分に溝を付けて、持ちやすくする。 - 手ガリ:
毛丈(毛の長さ)を定めて、毛先を揃えるために刈り込む。 - 仕上げ:
塗料を均等に塗る。
沿革と特徴
刷子(ブラシ)は明治7年(1874年)ころ、フランス製刷子を手本として製造され始め「洋式刷毛」と称された。明治10年上野公園で開かれた第一回内国勧業博覧会において西洋型として好評を博した。これらの洋式刷毛の製造に携わったのが従来の刷毛職人たちであり、毛は馬毛、木材は樫、穴をあけるにも手モミの錐というところから出発した。
明治21年、当時百三十銀行頭取であった松本重太郎氏によって日本最初の刷子製造会社が設立され、幾多の研鑚を重ねた結果、今日見られるような普及へと繋がってきた。ブラシ製造業は東京・大阪を中心に発展していった。産業界で新しい機械が出来てくると、そこにはいろいろな工業用ブラシが使われるようになった。家庭では生活の欧米化が進み家庭用ブラシの需要が増えた。それに伴い和歌山などのブラシメーカーは大規模な機械による大量生産を始めた。その後大阪・和歌山では工場の機械化がいっそう進んだ。一方東京ではもともと工業用ブラシ業者が多かったため耐久性が高い手植えによるブラシが作られていた。
手植えブラシは引き線と呼ばれるステンレス線により連続して植毛されているため、一穴ごとに植毛されている機械植えに比べとても丈夫である。このような理由から東京のブラシ製造業者は伝統的な手植え植毛を続けてきた。
連絡先
産地組合名 | 東京ハケ・ブラシ協会 |
---|---|
所在地 | 〒103-0011 中央区日本橋大伝馬町2-16 |
電話番号 | 03-3664-5671 |