江戸からかみ
えどからかみ
- 暮らしは変わる。美意識は受け継がれる。
- 江戸からかみは、日本家屋の間仕切りである襖の装飾として発展を遂げた。仏教の経典や和歌をしたためる紙を装飾したことが始まりで、長い歴史の中で技術が磨かれてきた。現在では襖をはじめ壁紙、タペストリーへと用途が広がっている。多種多彩な文様を和紙に表現するため、制作には独自の技術を持った複数の職人が携わる。版木に彫刻された文様を木版手摺りで和紙に写す唐紙師、金銀箔や箔を粉にした砂子で飾り付ける砂子師、織物の型紙染めを応用して文様を摺り込む更紗師が、技を競い合うように江戸からかみを作り上げてきた。町人文化を反映した文様は大らかさとダイナミックさを特徴とし、草花や波といった伝統的なモチーフは普遍的で洗練されたデザイン性を持つ。モダンな空間に江戸の美意識が溶け込み、和紙の温もりある質感が落ち着きをもたらす。襖に江戸からかみを用いた東京の住宅は人気が高く、ホテルなどでの使用も広まっている。また、江戸からかみの魅力を広く知ってもらうために、封筒や文房具などの製品も手がけている。
主な製造地 | 江戸川区、練馬区、文京区ほか |
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指定年月日 | 平成4年8月20日 平成11年5月13日(国) |
伝統的に使用されてきた原材料 | 和紙、織物、雲母(きら)、胡粉(ごふん)、顔料、どうさ、膠水(にかわすい)、金属箔 糊:布海苔、正麩糊(しょうふのり)、こんにゃく糊 |
伝統的な技術・技法
唐紙師による技法 3種類
- 引き染め
① 色具引き: 顔料を浸した刷毛で紙面に引く。
② ぼかし染め: 水を含ませた1本の刷毛で色をぼかしながら紙面に引く。
③ 丁子引き(ちょうじひき): 櫛状に間引いた刷毛を用いて、丁子模様(縞模様)を紙面に引く。 - 雲母引き(きらびき)手揉み
雲母を用いて揉むだけのものもあるが、多くは顔料や金銀泥を二層に塗り、手揉みした後、伸ばしてどうさを紙面に引く。 - 木版雲母摺り
紋様を彫刻した版木にふるいを使って雲母(きら)や胡粉(ごふん)を移し、その上に紙を置き、手で軽くなぜる。金銀箔を糊の付いた紙の上に置き乾いてから余分な箔を取った後、紙面にどうさを引く。
伝統的な技術・技法
砂子師(すなごし)による技法 5種類
- 箔散らし
金銀箔を切箔用の筒(糸を張った竹筒)や箔箸(はくはし)を巧みに操作し、紙面に散らす。 - 砂子まき
砂子用の筒(細かい網目の銅線を使った竹筒)の中に細かく切った箔を入れ、振動させながら紙面に繰り返してまいていく。 - 泥引き
刷毛の片側に金銀泥をつけ、定規に沿って刷毛の片側を浮かせて紙面に引く。 - 磨き出し
あらかじめ、泥引きした和紙の下に模様を彫刻した版木を置き、紙の上から泥の部分を猪の牙で紋様が浮き出てくるまでこする。 - 描絵(かきえ)
伝統的な日本画及び水墨画を描く。
伝統的な技術・技法
更紗師による技法 2種類 捺染摺り(なっせんずり)
- 単色摺り
和紙の上に渋型紙をのせ、顔料や染料を摺り込む。 - 多色摺り
数枚(5枚から7枚)の渋型紙を使用し、摺色を変えながら、まとまった紋様を構成していく。
沿革と特徴
「江戸からかみ」とは、襖や屏風などに貼られる加飾された和紙のことである。版木を使った木版摺りや伊勢型紙を使った捺版摺り、刷毛を使った引き染め、砂子手蒔きなど技法は多彩である。
もともとは平安時代に中国から渡来した紋唐紙を日本の和紙を地紙に模倣したもので、京都で和歌をしたためる詠草料紙として作られていた。
中世になると襖や屏風に用いられるようになり、江戸時代には多くの唐紙師がからかみをつくるようになった。
「江戸からかみ」は、木版摺りだけを重視した「京からかみ」に対し、木版摺りを基調としながらも型紙による捺染や刷毛引きなど多くの技法で作られるのが特長である。
その文様は、武家や町人の好みを反映した自由闊達で粋なものであった。
その後幾たびの戦火や大火に遭いながらも、そのつど職人の手により復刻され、今も人々の暮らしに彩りと安らぎをもたらしている。
連絡先
産地組合名 | 江戸からかみ協同組合 |
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所在地 | 〒110-0015 台東区東上野6-1-3 東京松屋ショールーム内 |
電話番号 | 03-3842-3785 |