東京の伝統工芸品東京の伝統工芸品 Traditional Crafts of Tokyo

江戸筆

えどふで

江戸筆

世界最高の識字率を誇った都市を支えた書き心地。
17〜19世紀にかけて、学問や芸術が庶民に浸透するに伴い、江戸筆は発展を遂げた。その大半はオーダーメイドによって作られ、ミリ単位で毛の長さを整える技術を求めて、名だたる書家・画家が江戸筆を愛用している。筆の生産地である中国や韓国から注文がくることも珍しくない。毛には、墨や絵の具を最適に含むという理由から山羊、馬、狸などの獣毛が使用され、使い手の筆跡や筆圧、用途に応じて毛の使い分けがなされる。頑丈に作られているため毛が抜けることはほとんどなく、筆圧に応じて毛が均一にすり減っていくため、手になじみやすい。墨持ちが良い上、筆勢に独特の濃淡やかすれをもたらし、アーティストの個性を支えている。筆づくりには三十近い工程があるが、職人たちは金属の櫛で毛を梳く工程にこだわる。丹念に梳くことによって、曲がった毛や折れた毛が取り除かれ、良質な毛のみが残った筆が完成する。歯がすり減った櫛は職人の勲章であり、一本の筆を完成させるまでにかけられた時間と労力を物語っている。
主な製造地 台東区、豊島区、練馬区ほか
指定年月日 平成2年8月9日
伝統的に使用されてきた原材料 穂:山羊毛・馬毛・たぬき毛・いたち毛・玉毛ほか。
軸:竹・木。

伝統的な技術・技法

  1. 筆の種類、穂の毛丈に応じた原毛の選別を行う。長年に亙って培われた職人の勘だけが頼りとなる。
  2. 先出造りは、筆の命と言われる穂先を作り出す作業で、金櫛で梳きながら毛先を揃え、毛先の無い毛や逆毛を取り除く(さらい)。
  3. 型造りは、命毛・喉毛・腰毛の束をつくり、その束から一本分を取り出し、穂の形を作り出す作業で、毛の間のバランスを図り、穂先の美しさを出すには高度の熟練を要する。
  4. 練りまぜは、毛丈の違う毛を均一にまぜあわせる工程で、穂の良否を左右する。
  5. 芯立ては、こまを使って穂の芯を作り出す作業で、芯の固さ、穂先の弾力など指先の感触を頼りに毛の量を調整する。

沿革と特徴

文房四宝の一つ「筆」は、「日本書紀」の推古天皇の18年(610年)3月の条に、高句麗僧曇徴(どんちょう)が「紙、墨の製法を招来した」と記されており、一応これが筆、墨、硯、渡来の嚆矢とされている。

以来、文化の発展と伝承に欠かすことのできない道具として、用途別に各種の筆が製造され、その製造技術も進歩改良されてきた。

江戸時代も中期には、商人の台頭とともに「寺小屋」が急増し、庶民の間にも筆が普及し大量に使われるようになり、江戸の筆職人の技術もさらに進歩し、多くの江戸名筆を生んだ。江戸主流の製造法「練りまぜ法」は元禄期に細井広沢により確立された手法で、明治5年の学制発布と共に急速に広まった。

関東大震災、第二次世界大戦の惨禍により、筆職人の多くは東京を離れたが、東京に残った筆職人は、高級筆の製造に活路を見出し、技術技法の継承を図っている。

筆の穂先には山羊毛・馬毛・たぬき毛・いたち毛・玉毛などが使われる。中でも書道用の筆には中国産の山羊毛が多く使われ中でも首下、内腿部の毛が最良の毛として珍重されている。先出造りは、筆の命といわれる穂先を造りだす作業で、金櫛で梳きながら毛先を揃え、毛先の無い毛や逆毛を取り除く。型造りは、穂の形を作り出す作業で、毛の間のバランスを図り、穂先の美しさを出すには高度の熟練を要する。練りまぜは、毛丈の違う毛を均一にまぜあわせる工程で、穂の良否を左右する。芯立ては、こまを使って穂の形を作り出す作業で、芯の固さ、穂先の弾力など指先の感触を頼りに毛の量を調整するものである。

連絡先

産地組合名 一般社団法人東京文具工業連盟
所在地 〒111-0053 台東区浅草橋1-3-14
電話番号 03-3864-4391
ウェブサイト http://www.bungu.or.jp/