江戸切子
えどきりこ
- 色ガラスに、光の通り道を刻み込む。
- 19世紀に生まれた江戸切子は、ヨーロッパのカットグラスの技法を取り入れた工芸品である。切子の産地は江戸以外にも薩摩(現在の鹿児島県)が知られる。時の権力者の庇護を失った薩摩切子が一時途絶えたのに対し、庶民の日用品として愛用された江戸切子は伝統を脈々と受け継ぐ。光の反射が魚卵の連なりに似ていることに由来する魚子をはじめ、二十種ほどある伝統的な文様は、少しも色褪せることなく現代の食卓に華やぎをもたらす。職人たちは伝統的な文様を受け継ぐ一方、オリジナルのカットを用いた製品づくりにも貪欲だ。厚さ2〜3ミリほどの色被せガラスを削る薩摩切子のぼかしの技に対し、江戸切子は厚さ1ミリ弱の色被せガラスに繊細な彫りを施し、その特徴であるシャープで鮮明な輝きを生み出す。上から覗き込むと万華鏡のように光が反射する切子の人気は高いが、透明ガラスに文様を施した切子のシンプルな美しさも再評価されている。日本酒、ビール、ワイン用など様々な形状が作られ、日用品としての使い勝手の良さ、長く使っても飽きのこないデザインが追求され続けている。
主な製造地 | 江東区、江戸川区、墨田区ほか |
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指定年月日 | 昭和60年7月15日 平成14年1月30日(国) |
伝統的に使用されてきた原材料 | ガラス生地(クリスタルガラス、ソーダ石灰ガラス) |
伝統的な技術・技法
- 墨付けは、竹棒の長さでガラス器の口からの位置を割り出し、内側を等分に分割した紙筒にガラス器をさし込んで水平位置の割出しをする。
- 荒摺り、三番掛けは、金剛砂の粒度を使いわけ、金盤の車の山は図柄によって3種類を使用する。
- 石掛けは、砥石車は天然産(九州の五島、笹口)の丸砥石を用いる。
- 研磨は木車(桐、柳)に磨き粉をつけ、図柄を丁寧に磨き上げる。
沿革と特徴
切子とは、ガラスの表面に金盤や砥石を用いて、いろいろな模様をカットする技法、つまりカットグラスのことある。
江戸切子を創始したのは大伝馬町でビードロ屋を営む加賀屋久兵衛である。
久兵衛はビードロの製造技法の先進地であった大坂で学び、その後、江戸に戻りビードロ屋を開業し眼鏡、寒暖計、比重計などを製造していった。
切子技法によるキラキラと輝く精緻な文様は、それにふさわしいガラス素材「クリスタルガラス」を得て、より真価を発揮していった。
そして大正から昭和にかけては、工芸ガラスといえばカットグラスといわれるほど、カットグラス業界は急速に、しかも高度な発展を遂げ、昭和15年頃には戦前における最盛期を迎えた。
今日、東京における切子工場は江東区と墨田区の両区に全体の八割が集中している。
なお、江戸切子と並び称される薩摩切子は、薩摩藩が江戸のビードロ業者四本亀次郎を招き、藩を挙げてガラス製造に取り組んだことから急速に発展したものである。
連絡先
産地組合名 | 江戸切子協同組合 |
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所在地 | 〒136-0072 東京都江東区大島2-40-5 |
電話番号 | 03-3681-0961 |
ウェブサイト | http://www.edokiriko.or.jp/ |