東京の伝統工芸品東京の伝統工芸品 Traditional Crafts of Tokyo

江戸和竿

えどわざお

江戸和竿

江戸の町人は、釣りの道具にさえ粋を求めた。
鮮魚を好んで食べる食文化を持つ日本において、釣りは庶民の趣味として親しまれ、釣り竿も高度な発展を遂げた。特に東京は太平洋に面し、複数の川が流れている地理的な特徴から、ほかの地域と比べて多種多様な釣り竿を作ってきた。石鯛竿、黒鯛竿、やまめ竿など、江戸和竿は魚の種類の数だけ存在するといっても過言ではない。竿は主にオーダーメイドで作られ、釣る対象となる魚の大きさや力加減に合わせて作ることが重視される。最低でも三年寝かせた竹を切断し、部位ごとに異なる性質を見極めて一本の竿に仕立てていく切り組み、竹の強度を上げる火入れの工程によって竿の善し悪しが決まる。完成品は天然素材ゆえ、使うほどに持ち手は手になじむ。持ち手に漆や彫金などの飾りを施し、実用性と芸術性を兼ね備えている点も釣り人の心をくすぐる。魚の力を吸収する計算されたしなり具合は、カーボン製とは比較にならない釣り心地の良さをもたらす。江戸和竿が、国境を越えて釣り人たちを魅了している所以である。
主な製造地 台東区、葛飾区、荒川区ほか
指定年月日 昭和59年11月1日
平成3年5月20日(国)
伝統的に使用されてきた原材料 タケ。すげ口に使用する糸は、絹糸とする。漆は、天然漆とする。

伝統的な技術・技法

  1. 切り組みは、作ろうとする竿の種類に応じて、全長・調子などを考え、竹を選別して切る。
  2. 火入れ(矯め)は、竹に火をとおしながら、油抜きをし、矯め木にて真直ぐにする。
  3. 継ぎは、継ぎ口を寸分のヌキのないように仕上げる。継ぎ方は、並継ぎと印篭(いんろう)継ぎとする。
  4. 塗りは、精製漆の摺り漆仕上げとする。

沿革と特徴

釣竿には、一本の竹をそのまま用いる「延べ竿」と、何本かの竹を継ぎ合わせて一本の竿にする「継竿」がある。継竿が出現したのは口伝によると「平安時代末期の治承4年、1180年に京都で発祥した」とあるが、これを裏つける資料は現存していない。

しかし、京都が発祥地であることは、江戸時代初期の延宝3年(1675)にだされた俳書の中に「いれこ竿」が登場することからわかる。

一方、江戸における継竿の発祥は、京都より遅れ、享保年間(1718-35)と思われ、その製造技術が一大飛躍を遂げたのは、江戸時代の天明8年(1788)に創業された「泰地屋東作」に負うところが多いと言われている。

ちなみに、現代の江戸和竿職人の系譜を溯ると、大部分の人が初代泰地屋東作にたどりつく。江戸和竿とは、何本かの異なる竹(布袋竹、矢竹、淡竹、真竹)を継ぎ合わせて一本の釣竿にする「継竿」のことをいう。

和竿作りは、まず竹の選別から始まる。竹林へ直接足を運び、一本一本吟味していく。良竹は、百本のうちせいぜい一本か二本ぐらいだといわれている。その後、約一ヶ月天日で乾燥させる。布袋竹、矢竹、淡竹、真竹一本一本の竿の調子を出すためには、竿の設計図ともいわれる「切り組み」がもっとも重要である。釣る魚、釣り方、釣り場、使用条件などを考えて、もっとも使いやすい釣竿になるように竹を選定する。

連絡先

産地組合名 江戸和竿組合
所在地 〒116-0003 荒川区南千住5-11-14 竿忠方
電話番号 03-3803-1893