東京の伝統工芸品東京の伝統工芸品 Traditional Crafts of Tokyo

東京手描友禅

とうきょうてがきゆうぜん

東京手描友禅

華美を好む京都に、江戸の〝粋〟はこう答えた。
17世紀、京都の絵師が創始したと伝えられる友禅染め。染め師や絵師が江戸に移り住んだことから独自の発展を遂げ、現在、東京手描友禅は京友禅、加賀友禅と並ぶ日本三大友禅のひとつに数えられる。分業制のほかの友禅染めと異なり、東京手描友禅は一人の職人が全工程を担う。型紙を用いず、手描きによって下絵から色挿しを行い、染め付けに至るまでの工程に表れる職人の個性は顕著だ。職人はモチーフを選び、図案に落とし込む工程に最も多くの時間をかけ、下絵を描いていく。ビルの街並み、動物、果ては宇宙まで、斬新な絵柄は職人のイマジネーションの結晶であり、様式美を重んじるほかの友禅染めとは一線を画する。かつての奢侈禁止令の影響で色数が絞られたことで、かえってシンプルなグレーやブルーを基調にした江戸の洒脱が生み出された。結果、東京手描友禅は京都の歴史的な街並みではなく、東京の現代的な街並みに溶け込み、歴史とモダンが組み合わさった若々しい着物として時代に調和している。
主な製造地 新宿区、練馬区、中野区ほか
指定年月日 昭和57年12月24日
昭和55年3月3日(国)
伝統的に使用されてきた原材料 絹織物

伝統的な技術・技法

  1. 下絵は、青花等を用いて描く。
  2. 防染は、糸目糊、白付け糊、堰(せき)出し糊、伏せ糊、又はろう(原文は「ろう」は漢字)描きによる。
  3. 挿し及び描き染めは筆又は刷毛(はけ)を用いる。
  4. 紋章上絵(もんしょううわえ)は、毛描き又は紋章彫刻をした型紙を用いる刷り込みによる。
  5. 刺繍(ししゅう)は、手刺繍による。

沿革と特徴

友禅染めは、江戸時代の貞享年間(1684-87)に、京都の絵師、宮崎友禅斎が創始したといわれている。

宮崎友禅斎、本名は日置清親(ひおききよちか)、号を友禅という。「好色一代男」に、「扇も十二本祐善(友禅のこと)が浮世絵」とあるように扇面絵師として知られている。ある時、呉服屋の依頼により、小紋模様の図案を描いたところ、大変な人気を呼んだ。それは、それまでの染め物と違って、多彩色の模様染めであったからといわれている。我が国美術史上で名高い尾形光琳も友禅を手がけ、その作品が残っている。

徳川家康が江戸幕府を開設(1603年)したおり、大名のお抱え染め師や絵師などが、京から移り住むようになり、各種技術・技法が伝承され、いろいろな織物や染物が作られるようになった。染め物に水は欠かすことのできない重要な要素である。神田川沿いに数多くの染師が住んでいた。

延宝元年(1673)に日本橋に越後屋呉服店(現・日本橋三越)が開設されその染工場が神田川上流の東京山の手(現在の新宿区高田馬場付近)につくられた。今日でも、新宿区に最も多く立地している。東京手描友禅は、構想図案から、下絵友禅挿し(下絵の文様に色づけすること)、仕上げまでの工程が作者の一貫作業であり、単彩のなかにも秘めた美しさと気品が特徴である。

連絡先

産地組合名 東京都工芸染色協同組合
所在地 〒161-0032 新宿区中落合3-21-6
電話番号 03-3953-8843