東京の伝統工芸品東京の伝統工芸品 Traditional Crafts of Tokyo

東京染小紋

とうきょうそめこもん

東京染小紋

その生地に、あなたは二度魅了される。
小紋とは、極小の柄の模様が繰り返し描かれた染め物である。17~19世紀中盤、諸大名が江戸城に登城する際、どこの藩か区別するために衣服(裃)に模様を染めることで発達した。模様は0.5~1ミリ程度の小さな点や細い線で構成され、代表的な柄である極鮫では、3センチ四方に千個もの点が滲むことなく染め抜かれている。遠目には無地に見えるため帯と合わせやすく、第一印象の華やかさで主張するのではなく、近くで見て初めて気づく染めの巧みさを“粋”とした美意識が表現されている。手作業で染めることで反物全体に陰影を生み、平面に奥行きを与える技術への評価は高い。白いままの裏地は技術の高さを証明するもので、染料が裏まで抜けないことで極小の模様を際立たせる。柄と色の組み合わせはオーダーメイドでき、単色染めだけでなく、複数の柄と色で染め分けることも可能。東京染小紋は和装の世界にとどまることなく、上質を体現する染め物として、ネクタイやチーフ、ストールなどにも活用の幅を広げている。
主な製造地 新宿区、世田谷区、練馬区ほか
指定年月日 昭和57年12月24日
昭和51年6月2日(国)
伝統的に使用されてきた原材料 絹織物

伝統的な技術・技法

  1. 色彩及び図柄は、小紋調とする。
  2. 型紙は、柿渋を用いて手漉和紙をはり合わせた地紙又はこれと同等の地紙に彫刻したものとする。
  3. 型付けは、手作業により柄合わせする。
  4. 地染めは、引き染め又はしごきとする。
  5. 捺染糊(なつせんのり)は、もち米粉に米ぬか及び食塩等を混ぜ合わせたものとする。

沿革と特徴

小紋とは室町時代に発祥し、江戸時代に普及した型染めのことである。

大紋型染め(だいもんがたそめ)、中型染め(ちゅうがたそめ)に対して、細かい模様柄の型染めのことを小紋型染めと呼んでいたことからこの名が伝わったといわれている。

小紋の発達は江戸時代初期に武士の裃(かみしも)に細かな模様が染められるようになってからである。江戸には全国の諸大名家の江戸屋敷が置かれた。こうしたことから江戸の町に多くの武士階級が増え小紋の需要もたいへん多くなり諸大名家では各自特定の文様柄を決めて着用していた。はじめは武士だけの裃小紋でしたが江戸時代中頃から町人文化が栄えると小紋染めは庶民生活に必要な、きものや羽織等に染め上げるようになり需要が拡大し、盛んにつくられるようになった。

明治の初めに発布された断髪令や欧風化の影響により男子の小紋の需要は大幅に減った。しかし女性のきものとして需要が増え続け、明治中頃には小紋に草花模様を描いた訪問着等が出来、女性のきものの「華」として、今日まで親しまれている。

現在、東京染小紋は、伊勢で型彫りをし、東京で染められるものをいう。この型彫りは錐と小刀を使って文様を彫る。その種類は「錐彫り」「突き彫り」「引き彫り」「道具彫り」等があげられる。そして型紙を一度に7、8枚重ね、長さ13cm幅40cmの間に彫る。なかには、細かい柄で、3cm平方に千個以上の穴をあけるものもある。こうした型彫りの文様が、すばらしい小紋を作り出している。

連絡先

産地組合名 東京都染色工業協同組合
所在地 〒169-0051 新宿区西早稲田3-20-12
電話番号 03-3208-1521
ウェブサイト http://www.tokyo-senshoku.com/